遺留分減殺請求

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1:相続とは 2:相続手続き 3:相続財産 4:相続放棄と相続の承認
5:法定相続人 6:法定相続分 7:遺贈・死因贈与 8:特別受益と寄与分
9:相続欠格・相続廃除 10:遺留分減殺請求 11:遺産分割協議書 12:遺言書
13:遺言執行業務 14:遺産の調査・評価 15:成年後見・任意後見 16:事業承継


遺留分減殺請求

遺留分減殺請求|遺産相続に関する基礎知識10/16

■遺留分とは

遺留分とは、直系卑属(子など)、直系尊属(親など)、および配偶者に認められた、遺言等によって相続財産などを侵害された場合にも回復の請求をすることの出来る、法定相続分のうちの、一定割合の部分のことをいいます。
法定相続人のうち、兄弟姉妹は遺留分を有しておりません。

本来、原則として、誰でも自分の財産は生前処分でも死因処分(「死んだらあげる」という、死を原因とする贈与契約など)でも、自由に行うことが出来るはずです。
よって、遺言によって、自分の築き上げた全財産を全くの他人に贈与しても問題はないはずです。
推定相続人の相続財産に対する期待は権利として保護する必要が無いのでは?とも思えます。

※例えば、
・「私の信仰している宗教法人△△△△に全財産を寄付する」
・「私の愛人○○○○に全財産を捧げる」
などなど


しかし、夫婦や親子が家計を共同にしていた場合などは、財産の名義を被相続人の単独名義としていた場合も多く、この場合には相続人の潜在的な共有持分を顕在化する要請が必要となります。
また、近親の親族間には本来相互に扶養義務があり、被相続人の収入に依拠してきた者に対する扶養の確保のため、相続財産留保権の要請も必要とされます。

そのために、この「遺留分」という制度の存在意義があるのです。

※あくまで遺留分を侵害する遺贈や贈与は無効ではありません。
遺留分を侵害された者は侵害された遺留分の返還請求権(「遺留分減殺請求権」といいます)を行使することが出来るということであって、この遺留分減殺請求権を行使するかしないかは各人の自由、となっているのです。


■遺留分権利者・遺留分割合

遺留分を請求する権利を有する者(遺留分権利者)は、兄弟姉妹以外の法定相続人です。
つまり、
 ①直系卑属(子など)、
 ②直系尊属(親など)、
 ③配偶者、
 の3者が遺留分権利者、となります。

遺留分権利者は相続人にのみ認められる権利です。
その為、相続欠格にある者や相続廃除された者、相続放棄をした者には認められません。
また、遺留分の権利を行使出来る一定割合の部分(遺留分割合)は、

相続人に配偶者や直系卑属(子など)が含まれている場合には被相続人の財産の2分の1
直系尊属(親など)のみが相続人である場合には被相続人の財産の3分の1
とされています。

★(民法第1028条)★
兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
 1.直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の3分の1
 2.前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の2分の1

以上をまとめると、遺留分は下記の表のとおりとなります。

相続のケース
遺留分
 1  相続人が
直系尊属(親など)のみの場合 
 直系尊属 
 3分の1 
 2  相続人が
配偶者 のみの場合
 配偶者
 2分の1
 3  相続人が
直系卑属(子など)のみの場合
 直系卑属(子など) 
 2分の1
 4  相続人が 配偶者 と
 直系尊属(親など)の場合
 配偶者  
 6分の2
 直系尊属(親など) 
 6分の1
 5  相続人が 配偶者 と
 直系卑属(子など)の場合
 配偶者  
 4分の1
 直系卑属(子など) 
 4分の1

■遺留分対象財産

遺留分の対象となる財産は相続財産に限りません。
遺留分の対象となる財産には、以下のものがあります。

被相続人が遺言によって行った特定の相続人への財産分け
被相続人が遺言によって行った相続人以外の第三者への贈与
被相続人が他界する前1年以内に行った贈与
被相続人が他界する1年以上前に行った贈与のうち、遺留分を侵害することを贈与の両当事者が知っていて行った贈与(特別受益)

相続開始時の被相続人の財産の価額に前記贈与分の価額を加えたものから全債務の価額を差し引いたもの、が遺留分の対象となる財産です。

■遺留分減殺請求

遺留分を請求する権利を遺留分減殺請求権といいます。
遺留分減殺請求権は「形成権」といわれる権利で、遺留分を侵害している相続人や第三者に対して侵害している遺留分を請求する意思表示さえ行えば効力が発生し、遺留分減殺請求をされた者に遺留分を返還すべき義務が発生します。
(昭和41年7月14日 最高裁判決)

※遺言執行者がいる場合には、遺言執行者にも減殺請求権を行使する旨を伝えておく必要があります。

(1) 減殺順序
減殺を行う場合、減殺を行う順序が決まっています。
遺贈を受けた者(受遺者)、死因贈与を受けた者、そして、生前贈与を受けた者(受贈者)、がいる場合、
まず、遺贈を受けた者(受遺者)、
次に、死因贈与を受けた者、
そして生前贈与を受けた者(受贈者)、
という順序で減殺がなされます。

遺贈が複数ある場合には、減殺の順序は遺言の定めにしたがいます。
もしも減殺の順序について定めがない場合には、遺贈の目的の価額に応じて減殺がなされます。
贈与に対する減殺は、新しい贈与(後にされた贈与)が先に減殺され、順次一つづつ前の贈与に及んでいきます。
贈与に対する相殺については、遺言で順序が定められていても無効となります。

★(民法第1033条)★
贈与は、遺贈を減殺した後でなければ、減殺することができない。
★(民法第1035条)★
贈与の減殺は、後の贈与から順次前の贈与に対してする。
(2) 受贈者の無資力
減殺請求を受けた受贈者が無資力の場合は、遺留分権利者が損失を負担します。
つまり、遺留分権利者は、財産の返還を受けることが出来ません。

★(民法第1037条)★
減殺を受けるべき受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰する。
(3) 減殺請求権の消滅時効
減殺請求権を行使出来る期間は、
①相続の開始を知ったとき(つまり死亡したことを知ったとき)から1年、
②または贈与や遺贈が行われていたことを知ったときから1年間、
③ただし、相続が開始してから10年間が経過したときは、知っていなくても行使が出来ない、
となっています。

★(民法第1042条)★
減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。
相続開始の時から10年を経過したときも、同様とする。


■遺留分の放棄

遺留分は、侵害された場合に減殺することの出来る権利でありますから、行使をするもしないも遺留分権利者の自由です。
よって、相続開始後は自由に放棄することが出来ます。
しかし、相続の開始前であっても、家庭裁判所の許可さえ得れば、放棄することも可能です。
※相続放棄が、相続開始前には行うことが出来ないこととは混同しないようにして下さい。


遺留分を放棄しても、相続人であることには変わりありません。
侵害されなければ何らの影響も受けることはありません。
ただし、遺留分の放棄を認めると、一方では、相続人間の身分関係によって無理矢理放棄をさせられたりするおそれも生じます。
その為、家庭裁判所が遺留分の放棄に対して一定の許可する基準を定め、許可するかどうかの審査(判断)をしています。


遺留分放棄を許可する場合の基準とは以下のようなものです。

①放棄が本人の自由意思にもとづいているか
②放棄の理由に合理性と必要性があるか
③代償性・対価性があるか
  (たとえば放棄と引き換えに先に現金をもらうなど)




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